児童養護施設から大学へ
~俺の道vol.7児童養護施設出身の大学生編~
0.企画趣旨
この企画では、恵迪寮(けいてきりょう)に住んでいる様々なバックグラウンドを持つ人々にインタビューをしています。のですが、今回は特別企画として恵迪寮生ではない人にインタビューを実施しています!!
世の中にはいろいろな選択肢が存在するということ、またそんな人が身近にいることを知ってもらうことで、中高生の進路についての判断の一助にしてほしいという思いからはじまりました。ぜひ参考にしてみてください!
1.今回のゲスト
今回のゲストは、北海学園大学人文学部英米文化学科4年の2部学生であるOさんです。
Oさんは、筆者と小中高を共に過ごしてきた、児童養護施設出身の大学生です。
Q.現在は何をされていますか
「北海学園大学人文学部英米文化学科4年の2部学生だよ。」
ーどうして札幌に?
「もともと別の大学を志望していましたが、受験で失敗してしまい浪人するわけにもいかないので北海学園に行くことに決めました。」
ーどうやって大学を選びましたか?
「高校の時担任の先生に2部なら昼間バイトして夜は学校に行くことができるから、奨学金を借りれば1人でもやっていけると言われたので2部の大学に行こうと決めていました。」
ー大学では何をされていますか
「英語を全賛勉強中。TOEICで750点オーバーを目標に。いつかは話せるようになりたい。」
ーどうして英文科を選んだのですか?
「中学の頃から英語が好きだったので、もっと英語を学ぶために英米文化に進みました。本を読むのはあまり好きではないのでそこまで多くはないですが、ジョージ・オーウェルの「動物農場」はお気に入りです。好きな漫画の原作とも言える作品で、人間vs動物の構図が面白いです。
ー夜間の大学はどうですか?
「昼間に比べて1日に受けられるコマ数が少ないので一つ一つの講義が重要になります。1、2年のころは月から土までビッシリでした。」
Q.生活費や学費などはどのようにやりくりしていますか
「学費はありがたいことに全額免除(授業料は年間16万ぐらい)。家賃、光熱費、食費、通信費、その他諸々かかる費用全てバイト代と奨学金で何とかやっています。8時〜15時バイト、18時〜21時学校、22時〜1時バイト。バイト代は月12万ぐらいで、返済不要の奨学金が月7万5000円ぐらい。」
Q.児童養護施設出身の難しさを教えてください
「やはり1番不安なのはお金です。3年からはありがたいことに学費免除になりましたがそれまでは奨学金を借りていました。卒業したらそれを返していかないといけないのが悩み。宝くじ当たんねーかな。」
「2番目は時間がないこと。バイトをして自分でお金を稼がないと奨学金だけでは生活できません。多い時で週50時間近くシフト入ってたこともあります。3日でいいから何もない日をゆっくり過ごしたい。」
Q.同じような施設出身の方へ向けてメッセージなど
「お金はできる限り貯めること、お金のかからない趣味を見つけること。年1で大きな散財をすることぐらいかな。それと受けられるサービスやもらえる奨学金はちゃんと利用すること。ストレスを溜めすぎないように。」
2.まとめ
Oさんは、最初に述べたように筆者と小・中・高を共に過ごしてきました。筆者の数少ない親友と呼べるうちの一人です。
ハンディがありながらも、懸命に生きるその様は筆者に元気を与えてくれます。
現在施設にいる人も、そうではない人も、この記事を見てなにか進路について考える機会になれば幸いです。
3.筆者の余談
先日、用事を終えて本屋さんでブラブラしていると、「勉強する気はなぜ起きないのか(著外山美樹)」と題する本を発見。
この手の題名の本は今まで何回か見たことがありますが、新書だったこともあり、買ってみると、その中に面白い記述がありました。
「AさんとBさんは高校入学直前までは、ほとんど同じ成績でした。ところが、Aさんは偏差値の高い進学校に入学したのに対し、Bさんはたまたま高校受験で失敗してしまい、Aさんとは異なる、偏差値がそれほど高くはない高校に入学することになりました。
(中略)
Aさんは、よくできる生徒ばかりの高校だったため、周りの友達と自分を比較してしまい、自分は本当はあまり勉強ができないのではないかと落ち込んでしまい、勉強に対するやる気を失い、最終的には成績は悪くなってしまいました。
一方のBさんはそこまで成績が良くない生徒が集まる高校なので、他の生徒と比べて成績が良いほうでした。自分よりも成績が悪い友達と自分を比べて、『自分は勉強ができるんだ』と自信をつけます。そこから勉強に対するやる気も上がり、成績がさらに良くなり、一年後にはAさんよりも成績が良いというふうに変化しました。」
心理学の世界ではこれを、「井の中の蛙効果」と呼ぶそうです。
この文章を引用して何がいいたいか、というと中学受験、高校受験、ひいては大学受験に失敗したからといって、悪いことばかりじゃない、ということが言いたかったのです。
自信を持つ、というのはとても大事なことです。
以前紹介した「努力少年」もこのような「井の中の蛙効果」で北大に進学できたのかもしれませんね。
今日はここまで。
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